津久井やまゆり園再生にむけて

ともに生きる社会ーかながわ憲章12月4日から10日までは人権週間でした。

「自分のいのちは自分のもの」です。

平成28年7月、県立障害者施設「津久井やまゆり園」で、「障害者は生きていても価値がない」という身勝手な論理で、19人もの方の命が奪われました。
県では同年「人としての尊厳」を回復する福祉へ、の決意のもとに「ともに生きる社会かながわ」憲章がつくられました。今年10月にはロゴデザインも新しくなりました。

津久井やまゆり園について、12月5日の本会議場で黒岩知事の異例の発言があり、園を引き継いで2施設の指定管理者となっている「かながわ共同会」への指定を短縮・見直しをし、令和3年度からの指定管理は公募する、との方針が発表されました。

かながわ共同会は事件の際の施設指定管理者でした。
事件の後、共同会による運営の継続には様々な疑問が出ていました。
それでも、入居者には慣れている同じ職員の方のほうが安心して過ごせること、入居者ご本人の希望に沿うような「意思決定支援」にも、今の職員さんが対応したほうがいいなど、多くの意見から判断し、継続が決定されました。

それを、いきなり覆す発言に議会での動揺がおき、マスコミでもとりあげられました。
知事の発言を3点に集約すると

  1. 共同会の別施設の元園長が、子どもへの強制性交罪で逮捕されたこと
  2. 外部から、津久井やまゆり園で入所者を車いすに長時間拘束していた、園外への散歩がほとんどなかった、との声が届いたこと
  3. 他の法人の施設に移った元やまゆり園の入所者が、希望に満ち溢れた表情をしたのを見たこと

これらを理由とした決定との話でした。 

10日に行われた、私も委員を務める厚生常任委員会で明らかになったのは、上記②の、津久井やまゆり園の入所者への対応は、これからの調査で事実確認していくこと、上記③の、知事が見たのは実際の現場ではなく、テレビの報道番組を見ての感想だったことでした。

いったい何を根拠に、共同会の福祉事業者としての信用を失墜させるような発言を、わざわざ本会議場で言ったのか。
ただの思い付きではないのか?
事実確認もせずにここまで公言してしまうのは、逆に大きな問題ではないでしょうか。
各委員からも「説明を何度聞いても納得できない」「入居者や家族、県民に大きな不安を与えた」「知事の重要な発言の根拠がテレビ番組だとは驚き、がっかり」との発言がでました。

 委員会での審議を受けて、次の日の新聞には、当の共同会の代表からは「容認できない」とのコメントが載り、また入所者の家族会も「これからも共同会を支える」とのコメントを寄せています。

今後、元園長が逮捕された「愛名やまゆり園」は特別監査が予定されており、知事のもとに長時間拘束などの情報が寄せられた「津久井やまゆり園」は立ち入り調査が予定されています。
本来はこうした調査の結果を受けて、公的な判断を行うべきだったと思います。
調査結果によって、知事の発言に誤りがあったとしたらその責任は重大です。

やまゆり園事件はいまだ被告の反省の声も聞けない中、来年1月8日に初公判、判決は3月16日の予定で裁判が進められています。
この事件を起こした被告の「いのち」への価値観、それは果たしてこの被告だけの問題なのでしょうか。
格差が広がる中で効率化を求める社会、そこからこぼれ落ちる人への「自己責任」論。
弱者がもっと弱い人を攻撃することで、なんとか自分の存在意義を見つけるていく、そんな風潮が蔓延しているのを感じます。
ヘイト、差別、性被害、児童虐待など、人の命に関わる様々な問題は、苦しい社会状況の反映に思えてなりません。

今回の決定は、県と共同会や家族の皆さんとの信頼関係にひびを入れたも同然で、入所者の方への意思決定支援や日常の支援に影響がないのか、大きな不安を感じます。
入居者、家族や関係者の皆さん、共同会、そして何より県民への丁寧な説明を行い、信頼回復に努めていかなければなりません。
今後の指定管理がどうなるのか、そして、入居者の皆さんの尊厳が保てる津久井やまゆり園の再生にとなっていくのか、今後も注視していきます。

【動画】津久井やまゆり園、運営者見直しへ/神奈川新聞(カナロコ)