安倍晋三元首相銃殺事件の初公判
10月28日、安倍晋三元首相銃殺事件の初公判が行われ、山上被告は殺人罪を認めました。
あの事件から3年。安倍元総理の後継と言われる高市早苗総理とトランプ米大統領との会談の日に、事件の初公判が行われているというタイミングには、感ずるものがあります。
山上被告の背景には、カルトによって家族そのものが破壊され、将来への希望を奪われた宗教2世の子どもたちや家族の悲惨な状況があります。山上被告の母は、教団にのめり込み、献金額は1億円にものぼり、そのことで、兄が自殺をし、山上被告は大学進学を諦めざるを得なかった。旧統一教会の信者には、同様の深刻な被害を抱えた方達がたくさんいます。
この国の政治は長きにわたりこの問題を放置し続け、それどころか、この国の長期政権を担う政党こそが、その旧統一教会の絶大な支援によって支えらてきたという状況。安倍元総理が旧統一教会のイベントで、教祖を称えたのを目の当たりにしたことが殺害の大きな動機であるとのことです。法と正義を担うはずの国家や政治が、カルトを放置し、笑顔で利用し、あまつさえ称えまでする。子どもの人生を巻き込んで、家庭が崩壊していく様を見て見ぬふりする残酷な現実が、どれだけ深い絶望を彼に与えたか、カルトを野放しにする中で、一人の被害者をテロ犯罪者へと追い込んだことに、政治の暴力を感じざるを得ません。
一方で、高市総理が来年度のノーベル平和賞にトランプ米大統領を推薦するというニュース。
イスラエルとハマスの停戦合意を取り付けたことを理由にあげていますが、停戦合意後も空爆は続き30日には子ども46人を含む100人が殺害されました。パレスチナ問題の根幹は、長年のイスラエルによる国際法無視の入植活動と、民族差別的なアパルトヘイト政策にあります。違法な入植で家をブルドーザーでなぎ倒し、パレスチナの農民の育てた樹齢数百年のオリーブ畑を焼き払い、家と職を失ったパレスチナ人を、下層民として扱い、自治区を分断する壁を建設し、パレスチナの経済と生活を切り刻んできました。
その背後に、イスラエルを毎年数千億円の軍事支援で支え、国連の非難決議を常に拒否権で妨害してきた米国の支援があります。選挙におけるユダヤマネーだけでなく、世界の先進国がイスラエルによる明らかな国際法違反を放置し続ける姿をパレスチナ人は見せ続けられています。法が正義を無視するところテロは産まれます。そんな米国大統領をノーベル平和賞に推薦、これほど平和という言葉を軽くもてあそぶ外交はありません。米国や西欧諸国とは一線を画してきた今までの日本の中東外交の方針とも矛盾します。
二つの大きな戦争を経て、人類が不完全ながらもやっと手にした国際法秩序、中国政府のウイグルへの抑圧を抑制させるのも、武力による現状変更を牽制するのも、国際法秩序以外に使える根拠はありません。大国の利害が優先される世界で、それでも国際法秩序を一ミリずつ積み上げてきた世界の歴史。米国の友人として、中国の隣人として、東アジアの大国として、責任ある外交を求めていきたいと思います。


