マイナンバー制度実施の中止を国に求める陳情に賛成しました。
陳情第12号 マイナンバー制度実施の中止または延期を求める国への意見書提出を求める陳情について、賛成の立場で討論をいたします。
2003年に開始された住民基本台帳カード、いわゆる住基カードですが、導入時には大変大きな議論が巻き起こりました。ネットワークへの参加をかたくなに拒んだ自治体などもあり、住民すべてに番号をつけることの是非が議論されました。結果としては、余りにも使いにくいため全く普及が進まなかった。2014年の時点で普及率5%という反省を踏まえて、今回のマイナンバー制度では、さまざまなデータを結びつけることを最初から想定しています。巨額な財政赤字を抱える政府が、400億円かけて整備した住民基本台帳ネットワーク制度を12年で廃止し、別の番号制度を導入するというひどい無駄遣いがどうして許されるのか全く理解できないというそもそもの問題もありますが、来月には番号通知、2016年1月からは運用開始されるというマイナンバー制度の問題点を指摘いたします。
1点目に情報漏えいのリスク。陳情者の指摘するとおり、年金情報の流出は記憶に新しいところです。年金番号や住基カードの場合と違って、マイナンバーは官民共用です。従業員2人の事務所でも、情報の管理者すなわち個人番号関係事務実施者が必要になります。番号取り扱いの窓口がふえれば、それはそのまま情報流出のリスクが高まることになるのは当然です。一たん流出してしまった個人情報は回収不能で、年金機構のケースでは番号をつけかえました。マイナンバーではどういう対処をするのか、まだ明らかにされていません。
2点目に事業者の過大な負担です。陳情を出された開業保険医の皆さんでも過大に思う負担が、さらに小規模の自営業者には負い切れないと思われます。先ごろ財務省が試案として出した、消費税10%に伴う還付金システムなどは小規模事業者いじめの最たるもので、還付金申請のためのオンラインシステムつきのレジをすべての小売業者に備えさせるとか、そういうお話もあり、あり得ない話だと思います。
適用範囲はどこまで広がるのか、この点が3点目です。年金に関しては、先ごろのデータ流出事件のあおりで先送りになるようですが、税務関係、健康保険、預金口座、通信販売、公安情報、ありとあらゆる個人情報を集積することになるかもかれません。特定秘密保護法によって個人情報保護法が形骸化してしまった現状で、一体どうやって個人情報を守ればいいのでしょうか。社会保険番号という形で1936年から個人番号制度を導入しているアメリカでは、年間900万件の成り済まし犯罪、犯罪被害額は170億ドル、約2兆円ということです。人口比で考えると7700億円になります。それも制度導入に伴うコストとして容認しなければならないのでしょうか。世界の潮流は、番号制度の適用範囲は限定する方向に向いていると思います。
私はこれまで、マイナンバーに関する本市の予算また条例案に関しては、地方自治体として拒否できる要素がない状態であることから賛成してまいりました。しかし、これまで申し上げてきたように、マイナンバーは一般市民にとって何のメリットもなく、情報漏えいのリスクと情報管理のコストがのしかかるばかりであり、陳情者同様、運用中止または再検討に向けて延期すべきことと考え、また、このことは本市議会からも国へぜひ意見書を提出すべきと考えております。
以上をもちまして、陳情第12号の賛成討論といたします。
『陳情第12号
マイナンバー制度実施の中止または延期を求める国への意見書提出を求める陳情』の原文